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ネットニュース

更新日:2023年10月14日

ネットニュース(全国版)に掲載いただきました。



 透明度が高く淡水で快適に泳ぐことができる滋賀県の琵琶湖。8月に入り、多くの遊泳客が来て湖水浴を楽しんでいるが、7~14日の8日間に3人が死亡するなど水難事故が相次いでいる。一見穏やかに見える琵琶湖でなぜ死亡事故が後を絶たないのか。

 県警大津北署などによると7日、大津市の北比良水泳場でサッカークラブのメンバーで遊びに来ていた大阪府の小学4年の男児(9)が遊泳中に溺れて死亡。9日には同市の近江舞子北浜水泳場で、飲酒後に遊泳した京都市山科区の女性(47)が溺れて死亡した。同水泳場では14日にもスリランカ人男性(48)が溺死した。更に18日、同市の近江舞子中浜水泳場で男子大学生(19)が行方不明となっている。現場はいずれも湖西地域で、県警地域課によると、過去5年間の6~9月に琵琶湖での遊泳中の水難事故は計18件で13人が死亡した。このうち約7割が湖西地域で起きた。  

 湖西地域に事故が集中する要因の一つは琵琶湖の地形にある。琵琶湖は西側に断層があり、東側に比べると急に深く沈み込んでいる。遊泳禁止のブイが置かれる岸から10メートルの地点の水深は約2メートルだ。今月の死者はいずれもブイの外側で見つかり、水深は約1・5~10・5メートルだった。水深が深くなると、表層部との温度差に体が対応できず心臓まひや足のけいれんを起こして静かに沈むケースが多いため、周囲が気付くのが遅れるという。事故に遭った4人も溺れる瞬間を見た人はいなかった。更に淡水のため海水よりも浮力が少ないほか、水深が深い場所は水流が早く、複数方向から風が吹くという特性も加わって足を下に引っ張るような渦が発生することもある。  

◇ライフセーバー不足  水難事故が多い近江舞子中浜水泳場は県内で唯一、公認のライフセーバーを配置しているが、昨夏に近江舞子ライフセービングクラブを設立した日本ライフセービング協会の指導員、村松秀紀さんは、事故が減らない要因としてライフセーバーの少なさなど水泳場の安全管理の課題を挙げる。近江舞子中浜水泳場は最盛期には1日に約3000人が訪れる。一般的に海では100メートルに1人を配置することが望ましいが、600メートルの中浜水泳場では2~3人が監視する体制で、休日のみだ。今月の事故は全て平日の午後に起きた。村松さんは「ライフセーバーがいる近江舞子でさえ、遊泳客数や浜の大きさなどを考慮すると危険な状態だ」と指摘。「まずは湖西を中心に地元の大学にボランティアを要請するなどして数を増やしたい」と話す。一方で遊泳者も琵琶湖の特性を理解し「一人一人が『自分の身は自分で守らないといけない』という認識を持つことが重要だ」と訴える。   

 ではどういった対策が必要なのか。同署はまずライフジャケットの着用を挙げ「泳ぎに自信がある人でも水につかるのは胸までにし、子供は体に合ったライフジャケットを必ず着用してほしい」と呼び掛ける。21日に近江舞子北浜水泳場で子供の遊泳を見守っていた神奈川県大和市の澤田太郎さん(40)は「琵琶湖で事故が多発していることを知り、子供用のライフジャケット急いで買った」と話していた。他にも同署などは▽午後は体力が落ちるため無理をしない▽複数人で行動する▽危険や疲れを感じたら、体を水平にして浮かんで助けを求める――などを挙げる。  

 事故現場にも立ち会ってきた村松さんは「最高の思い出を作ろうとやってきた人が、一瞬で命を失う悲しみは大きいもの。水上でのルールは厳しく守ってほしい」と訴える。

【菊池真由、飯塚りりん】



近江舞子ライフセービングクラブ

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