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素手による救助の方法(普及)

更新日:8月25日

■素手による救助の方法

 夏休み、スポーツ専門学校の夏期講座で学生さん30名を対象に、クラブ代表により、ライフセービング講習の講師を務めさせていただきました。今回は、主に「素手による救助」の方法の実習を行いました。

 ライフセーバーは、通常、レスキューチューブやレスキューボードを使用して救助を行いますが、そういった器材のない環境に置かれることの方が多いと思われ、将来性や有用性等を鑑み、「素手による救助」の方法の普及も必要であると考えます。



 以下に、要領を整理しておきます。


◆大きく分けて、2系統の方法があります。

☆1つめは、溺者を「片手」で確保し、「横泳ぎ」で搬送する方法です。

 救助者は、溺者の後方から近づき溺者の顎をつかみ寝かせます。

 そして、①溺者の手首(右手なら右手、左手なら左手)を持つ(リストトウ)、あるいは、②溺者の片脇に下から手を回し掴(つか)み(アームピットトウ)、(あるいは、③肩口の上方から腕を回し、反対側の脇の下を掴み、胸を抱え(クロスチェストトウ)、)「横泳ぎ」(前方の手で水をかきながら、あおり足または逆あおり足)で搬送します。

 片手と両足が使えるため、強い搬送力があります。

 

☆2つめは、溺者を「両手」で確保し、「平泳ぎのキック」か「巻き足」で搬送する方法です。

 救助者は、溺者の後方から近づき溺者の顎をつかみ寝かせます。

 そして、①溺者の頭を両手で挟む(ヘッドトウ)、あるいは、②溺者の両脇を両手で掴み(アームピットトウ)、(あるいは、③溺者の両脇の下から腕を通して両方の肩を掴み(ダブルショルダートウ)、)「平泳ぎのキック」か「巻き足」で搬送します。


 いずれも、進行方向に背中を向けながら進むことになります。時折進行方向を確認します。抵抗を軽減するために、溺者をできる限り水平にしてください。


では、以下で詳細について、見ていきます。

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〈基礎泳法〉

 救助には、①溺者に接近したり搬送するための「クロール」、「平泳ぎ」、「背泳ぎ」、②溺者を確保する際の「立泳ぎ」(手のスカーリング技術、足については、巻き足・踏み足(・挟み足))、「潜水」、③溺者を引き上げ搬送するための「横泳ぎ」が、必要となります。

 なお、足の釣りを予防するため「ふくらはぎ」のストレッチは入念に行っておくと安心です。

      


〈救助の流れ〉

1⃣溺者の発見

 顔色が悪い、不自然な動作、水面にうつ伏せで浮いている、動きが不規則、長時間水に入り低体温症になっている等の兆候をつかみ溺者を発見したら、まず、周囲に事故発生を知らせ、協力者を要請します。(一人で飛び込んでいかないようにしてください。)


2⃣救助方法の決定

 ①複数人(⇔一人)、②陸上から(⇔水中に入って)、③器材を用いて(⇔器材を用いず)、④泳がないで(⇔泳いで)の組み合わせで、できる限り安全な方法を選択します。

 方法には、トーク(声をかけて落ち着かせる)、リーチ(腕を伸ばしたり、距離の届く棒などにつかまらせる。この際、救助者が水中に引き込まれないよう、寝そべったりして差し出す。)、スロー(浮くものを投げる(ロープでくくられているとなお良い。)、ウエイド(足の届くところを歩いて助けに行く。)、ロウ(ボードなどに乗って近づく。)、スイム(泳いで近づく。)、トウ(確保した後、泳いで搬送する。)があります。


3⃣溺者への接近(素手による方法)

 溺者にもっとも近い陸地から入水し、余力を残して接近します。

 この際、水の抵抗を軽減するため、膝までの水深では、左右の足を交互に外回しして(右足は反時計回り、左足は時計回りで、外から内に回し)、水上に足を上げて走ります(ウエーディング)。また、さらに深くなると、上半身はドルフィンの要領で、足は水底を蹴って2~3回程度進みます(ドルフィンダイビング。急角度になって頭を打たないよう気を付けてください。)。その後、クロール(ヘッドアップクロール等)で接近します。

 溺者に抱き着かれないよう、距離を確保し、後方から接近します。やむなく前方から接近する場合は、直前で水中に潜り込み、溺者の膝を確保し溺者を回転させて後方に回ります。

 抱き着かれた場合は、溺者の片腕を両手で下から上に持ち上げ、水中に潜るなどして、離脱します(離脱法)。


4⃣溺者の水中での搬送

 素手の場合、上記の2系統のいずれかの方法を用います。溺者との身体接触部分が少なく、かつ、片手が使える方法が、より安全で強い推進力が発揮できます。

 ちなみに、レスキューチューブを用いる場合は、①レスキューチューブを差し出し、溺者に両脇で抱えてもらうか、②溺者に巻きつけてから搬送します。この場合、基本的にはじめの2~3回は背泳ぎをし、その後クロールで搬送します。(素手による搬送方法と比較すれば、一般的ではありませんが、背泳ぎが得意な方は背泳ぎで搬送し、時折前方を確認する方法でも良いかと思います。)

 また、レスキューボードを用いる場合は、溺者に接近して、①ボードにつかまって休んでもらう、②ボードからチューブを投げて休んでもらう、③ボードの前方に乗りうつ伏せになってもらう、(意識がなければボードを2回転させてボードに溺者を乗せる、)あるいは複数人の溺者がいる場合(概ね10人程度まで)は、ボードにつかまって浜まで可能な人全員でバタ足などして浜に帰るようにします。


5⃣陸への引き上げ

 足がつくところまで搬送出来たら、溺者を仰向けにし、溺者の両腕を頭の方に伸ばし、救助者は後方に進みながら、溺者と同じ方の手(溺者の右手を救助者の右手で、溺者の左手を救助者の左手)でクロスさせずに掴み、救助者は水中で両手を掴んだまま(反時計回り、あるいは時計回りで)、後方(沖を見ていた状態)から前方(浜を見る状態)に、反転すると、溺者をおんぶすることができます(パックストラップキャリー)。そのまま、歩いて浜まで搬送します。


6⃣心肺蘇生・救急隊への引継ぎ

 その後、心肺蘇生や救急隊への引継ぎを行います。


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 以上、素手による救助方法を見てきました。(これらは、かつて、日本水泳連盟の上級水泳指導員のカリキュラムで扱われていましたが、現在は扱われなくなりました。また、ライフセーバーにおいても、十分には普及されていません。そのため、現在では大変希少性のある内容です。)


 多くの人にとって、器材がない状況の方が一般的です。そのため、泳法を救助にどのように活かすのか、基礎技法を理解し、様々な条件で練習し、溺者との距離感等をつかみ、どこまでなら対応できるのか等を把握するとともに、レベルアップのためのトレーニングに努めてもらえれば幸いです。







 

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